【インタビュー】宮沢氷魚 誰のコピーでもない、自分だけの役者道「今なら自信を持っていられるから」
伝えると、彼は小さく首を振った。
「僕はアメリカ生まれで、向こうの血が4分の1入っているので、小さい頃偏見・差別を受けたこともあります。日本にいても、日本人扱いをされないときもあるから、いまいち居場所が見つからなかった。“向こうに行けば居場所があるかな”と思ってアメリカ留学したときも、ローカルの人とはまた別の“日本人”という見られ方をしましたし。そうなると、“自分の居場所ってどこにあるんだろう”と考える時期もあったので、当時の経験を思い出しつつ迅をやっていました」。
さらには、「あまり周りに相談せず、自分ひとりで考えこむ」という宮沢さんの性格も、迅に重なるところがあり、寄り添いながら役を自分色にしていったという。けれど、「よほどのことがない限り、そういうことはないんですけど、結果、最後の最後まで役のことをあまりつかめなかったというか…。ずっと悩んでいたんです。
撮影中もわからなくて、クランクアップしてからも“果たしてこれでよかったのかな”と残っているところがありました」。
そうした宮沢さんの迷う気持ちは、ある種、今泉監督の「理想通り」だったようだ。
「この間、取材で今泉監督とご一緒したときに“なるべく役者がその役のことをつかまないようにしていた”とおっしゃっていたんです。