【インタビュー】クリストファー・ノーラン×ジョン・デイビット・ワシントン、歴史的傑作『TENET』の誕生秘話に迫る
同時に、監督の「観客の理解力を信じる」姿勢を強く感じました。
ノーラン:常々、映画は誠実に作っていきたいと思っています。ではその誠実さとは何なのか?それは「自分が観たいものじゃないと作りたくない」なんです(笑)。
そして、「きっと、私が観たいと思う映画を楽しんでくれる人がいるに違いない」という信念はありますね。
自分だったら何を期待するのか?ワクワクしたいし、現実逃避がしたい。今までに見たことのない世界を見たいし、やっぱりエンターテイメントがいい。プラス、世界に対する見方がちょっと変わるかもしれないもの、あれこれ考えたくなるものが観たいんです。
――今回は、ノーラン監督がこれまで描いてきた「時間」というテーマがより複雑化していますが、『TENET テネット』における時間の意味合いとは?
ノーラン:「時間」はこれまではメタファーであったり、話を円滑に進めるデバイス的な役割を果たすものとして、使ってきました。
『TENET テネット』では、「世界の見方を変える」意味合いとして用いています。
――「逆行」は、まさに観たことがないものでした。
ノーラン:映画の中ではいろんな物理学の法則が出てきて、「すべてはシンメトリーだけれど、エントロピー(熱力学における、複雑さを表す概念の1つ)