【レビュー】『マティアス&マキシム』お互いにとって唯一無二の恋ならば、それでいい
特に、友人の妹であるエリカに自主短編映画への“出演”を約束させられ、皿洗いをしながら困惑するマティアスとマキシムをとらえた窓が切り取った画角にはハッとさせられた。
それは『Mommy/マミー』で話題となった1:1=正方形のインスタサイズではなく、Tik Tokやインスタストーリーズの9:16の画角。エリカはデジタルネイティブのZ世代、「ドラゴンボール」の話をしても通じない新世代なのだ。
その上、マティアスとマキシムを混乱させるきっかけを作った、この若き映像作家は「物事をラベルで判断したくない」と言ってのける。
まるで、オープンリー・ゲイであるドランについて「常にゲイの恋愛と母子の愛憎を描く」といったラベル=レッテルを張りつけていた批評家や私たちファンの凝り固まった決めつけに、ドラン自身が自分はそんなに単純じゃないと新たな挑戦状を叩きつけているようにも思えてくる。いろんな形があっていい、お互いにとって唯一無二の形であればそれでいい、と。
エリカに代表される、多様性のその先のインクルーシブ(包括性)をすでに受け入れている者たちのように、この映画を、グザヴィエ・ドランのありのままを観てほしいと投げかけられているような気がする。