【映画と仕事 vol.13 前編】「岸辺露伴は動かない」柘植伊佐夫 映画・ドラマに欠かせない “人物デザイン”という仕事はどのように誕生したのか?
――続いて、NHKの作品に参加されたのが、同じく大河ドラマの「平清盛」(2012年)ですね。今度は一気に時代をさかのぼって平安~鎌倉初期という時代です。
あれは大変でしたね(苦笑)。当時の貴族の装束や女性で言えば十二単などがありましたが、あの作品ではその史実の決まり事を少し破って、キャラクターに合わせた色にしたりしています。
僧侶が大勢出てくるんですが、あまりに多いので(笑)、袈裟を着ているシーンをあえて少なめにしたり、貴族の烏帽子に関しても、本来は漆で何層にも塗り固められているんですが、そうすると烏帽子が画面を占める割合がものすごく大きくなってしまうので、あえて透けさせて中のヘアスタイルが見えるようにしたり、様式を大事にしつつも「生きた」感じを伝えるための工夫を施しました。
そうすると烏帽子の強度が落ちるので、烏帽子が倒れることもあります。当時の貴族にとっては、烏帽子が倒れるって、ものすごい恥なんですけど、そういう表現があることで、逆に登場人物たちの情緒を伝えられるなとも思ったんです。権威や強さの象徴である烏帽子を使って、逆にそこに出てくる人間の弱さを表現できた部分があると思います。