くらし情報『止まらない“承認欲求”…現代の空気感をリアルに描く『シック・オブ・マイセルフ』』

2023年10月14日 17:00

止まらない“承認欲求”…現代の空気感をリアルに描く『シック・オブ・マイセルフ』

に対するエグい球を次々と繰り出してくる。シグネは働いているカフェである事件に遭遇して血を浴び、「自分を傷つけたら注目を浴びるのでは?」と考えてしまう。そして違法薬物に手を出し、身体がどんどん変化していくのだが…。

見た目や容姿に対する過度な意識はルッキズムに通じ、直近ではNetflixシリーズ「マスクガール」等でも描かれている。小説では金原ひとみの「デバッガー」(作品集「アンソーシャル ディスタンス」収録)や綿矢りさの「眼帯のミニーマウス」(作品集「嫌いなら呼ぶなよ」収録)で“お直し(整形)”に熱中する人々が描かれており、こうした題材選びにおいても時代の匂いをかぎ取る非凡な嗅覚を感じさせる。さらに、シグネが変化させた外見を病気と偽り、ハンディキャップを背負った人々による「セルフラブ」の広告塔としてプチブレイクしていく展開は、「多様性」を痛烈に皮肉ったものといえるだろう。同じノルウェーのオスロを舞台にした『わたしは最悪。』や、マイノリティがマジョリティを“利用”するさまを描いた高瀬隼子の「おいしいごはんが食べられますように」や年森瑛の「N/A」といった小説にも通じ、複雑化した現代のひりついた空気感を鮮度高くパッキングしている。

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