だからこそ、この作品にはそんな神秘的な部分を象徴するかのように、天使が登場するのではないでしょうか。
天使・ザスを演じるのは、ギャスパー・ウリエル。美しすぎる天使に、うっとりしつつも、このロマンティックで神秘な存在こそが、フランスにおけるワイン造りの奇跡を体現しているのではないかと気づいた私。生産者たちは、自分の努力だけでは偉大なワインができないことを知っています。気候、テロワール、そして人間。それらが上手く関わることでしか、偉大なワインは生まれない。そして、その組み合わせを考えることができるのは神のみ。何百年も続くワイン造りの中で、彼らには自然や偶然に謙虚になることを学んでいるような気さえしました。
ワイン造りに奇跡は欠かせないのだと。そんなちょっとロマンティックな発想が、ワインを、そしてフランスを特別なものにしているような気がするのですが、いかがでしょう。『約束の葡萄畑あるワイン醸造家の物語』を観ると、そんな気がしてくるはずですよ。
ヨーロッパ映画と称しておきながら、結局はフランス一色になってしまった今回のコラムですが、それぞれに特徴のある作品のラインナップになりました。偶然ではありますが、フランス映画の懐の広さを感じる、ちょうど良い機会になってくれれば幸いです。