発禁小説を映画化『フィリップ』は「戦争のトラウマに苦しむ男性についての映画」監督が語る
劇中、自身の容姿を武器に様々な女性を誘惑するも、恋愛に翻弄される様相も見せるフィリップ。だが「これは恋愛映画でもありません」「これは愛の欠如、愛の必要性、愛へのあこがれについての映画です」とも監督は説明する。
「フィリップは恋に落ちようと必死に努力しますが、戦争によって起こる友人たちの理不尽な死によってその感情を深めていくことができません。今は恋をしている場合ではない、彼は自分が目指していた感情を自ら破壊することを決意するのです」という。
その心の隙間を埋めるように、ナチスの女性たちを次々と誘惑し捨てていく主人公フィリップの冷酷でシニカルで反社会、物議を醸すフィリップの行動についても「すべて壊れやすく繊細なフィリップの性格を隠すための仮面」であると断言。
「人の嫌悪感を呼ぶように見えるかもしれません」だが「フィリップは自分の内なる悪魔を克服するために、他の方法で行動することはできません。現代だったらフィリップはおそらく心理療法士の下に通い詰めているでしょうね」と、いつの時代も一番の犠牲者となる普通の人間たちの心へ思いを馳せた。
ミハウ・クフィェチンスキ監督は、1990年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品のプロデューサーとして、後期代表作である『カティンの森』『ワレサ 連帯の男』、そして遺作『残像』まで製作をつとめあげた。