真摯な演出と演技が浸透する…中村倫也主演「Shrink―精神科医ヨワイ―」の魅力
それは人物造形においても同様で、ビジュアルや言動等々“キャラ立ち”を強くさせる手法もスタンダードなものだ。ただここで難しいのは、感情が揺さぶられる=激しくアップダウンするようなフィクションとしてのカラーを強めたとき、現実からはどんどん乖離していくということ。実際にある病気を扱う際、時としてそれは搾取になりかねない。
対して「Shrink」においては、そもそもの立ち位置からして現実感が順守されている。原作第3~4巻収録「PTSD」編では東日本大震災から歳月が経っても癒えない心のトラウマを抱える人物が登場し、第9巻収録「新型コロナウイルスと心」編では、患者と医療従事者それぞれの立場のエピソードが描かれる。第10~11巻収録「解離性障害」では「この病を安易にセンセーショナルに描くことで傷ついている当事者はいる」というセリフが登場。現実と並走しながら、創作の功罪までも見据えているのだ。
第3話「パーソナリティ症」より
ドラマにおいても共通認識が感じられ、様々な用語が2024年仕様にアップデートされていたり、雨宮のキャラクターにより「見守る」要素が強まっていたり、第3話では「花」の扱い方が変更になったりと、二次元→三次元の変換においてさらに現実に“馴染ませる”細やかな創意工夫が随所に感じられる。