ソロシネマ宅配便 第3回 『仮面病棟』永野芽郁が見せる“時に危なっかしい逸材ぶり”
映画『横道世之介』の隣人役で見せたどこにでもいそうで実はいない熟練のバイプレーヤー江口のりこ、深夜1時の吉野家でつゆだく牛丼食ってそうなくたびれたいい女を演じさせたら誰よりもハマるであろう内田理央。思わずこの看護師コンビのスピンオフ作品を見たくなってしまう。
原作ではボヤけていた病院サイド3人の輪郭がクリアになることにより、登場人物それぞれの“秘密”に対する葛藤や温度差にも説得力が出る。まさにそれぞれの仮面からこぼれ落ちる本心。個人的に映画版のミステリー要素は薄く、物語の仕掛けや謎解き要素についてはほとんどの客は早い段階で気づいてしまうかもしれない。しかし作品の見所はそこじゃなく、それぞれの立場での“正義”のぶつかり合いにある。
正義っていったいなにかね?登場人物たちは、自分の行動に理由づけて正当化させるが、いつの時代も自分が信じる常識や日常が揺らぐ瞬間に、人間の本性が暴かれるものだ。人にはそれぞれ事情がある……なんつって、映画が終わると本屋に立ち寄り、原作者の『時限病棟』と『誘拐遊戯』を購入して帰った。
今週末は外出を控え部屋に籠ることになりそうだが、新型コロナウイルスが落ち着き平穏な日々が訪れた時には、ぜひオススメしたい1本である。
お前さん、この映画を見なくていいのか?
(C)2020 映画「仮面病棟」製作委員会
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