ソロシネマ宅配便 第14回 草なぎ剛が演じる“究極の普通さ” - 映画『台風家族』
ピアノの才能に恵まれ将来を嘱望される娘から「ちゃんと自分で稼いで、自立しなよ」なんて言われちゃうさえない父親。あのドラマ『僕と彼女と~』の父親と幼い娘の関係性とはまた違う、思春期のリアルなダメ出し。
○■胸を打つ娘や父とのエピソード
小鉄と娘・ユズキ、さらに小鉄と父・一鉄(藤竜也)のエピソードは中年男が部屋でひとり観ると、やたらと胸を打つ。正直、泣けた。だって、小鉄のダメさって、セコい欲や虚栄心という誰もが少しずつ隠し持つ弱さでもあるから。同時に小鉄のたまに見せるやさしさは、誰もが自身の子どもや親に持っている感情だから。役者・草なぎ剛が具現化する普遍的な、あらゆる普通の人生と隣り合わせの感情を通して、観客はそこに自分を見るのだ。
映画の好みが分かれるラストの展開には個人的にまったく乗れなかったし、三男の千尋がユーチューバーという設定はあまりにイージーすぎじゃ……的な突っ込みどころも多々ある。
それでも、草なぎ剛が演じる“究極の普通さ”は、我々の心のずっと奥の方に違和感なく心地良く入り込んで来るのである。
109シネマズ&ムービル、3,000円の「ペア割」12月4日から毎日実施