女の節目~人生の選択 (10) vol.10「初めての、バイト」【17歳】
入試」というこの制度は、今ほど一般的ではなかった。
母校からの合格実績はたった一人、部活動と委員会で輝かしい成果を残した模範的優等生だ。職員室には「指定校推薦より狭き門なんだから、岡田さんみたいな生徒には無理」と推薦状の執筆を断られたりもした。私とて勝算があったわけではない。一般入試という正面扉が2月まで閉ざされていて、AO入試という窓が10月からふわふわ開いているのなら、寒い中おとなしく行列してドアが開くのを待つよりも、柵を越えて窓枠をよじのぼって侵入してみようと思ったまでだ。落ちて痛いのは私だけなんだから。当時はまだかなり高い評定平均値が求められたとはいえ、こんな考えの生徒が二人目の合格例となるのだから、優等生の先輩には悪いが「アホでも・オッケー入試」とは言い得て妙である。
ほんの数月前までは関西の国立大学が第一志望だった。
「今まで進学塾にかけた費用をドブに捨てて、倍近いお金を払って、その私立へ行くのね?」と算盤をはじく親の溜息がチクチク刺さる。売り言葉に買い言葉で、気づけば「うっせーな、全額自分で払やいいんだろ!」と言っていた。17歳の私は、そんな啖呵を切るのも楽しかった。来春になれば、一貫校のエスカレーターをようやく降りられる。