女の節目~人生の選択 (14) vol.14「初めての、就職」【23歳】
すべての出会いに感謝」なんて説教をするのだけれども、私はといえば、言えてせいぜい「偶然を楽しむ心の余裕って大事だよ」くらいだ。当時のウェブ日記に、もっともらしい「シューカツの総括」など書いていなくてよかったかもしれない。定年まで勤め上げるつもりで入った会社から、たった8年で転職するなんてことも、我々の身には簡単に起こる。
<今回の住まい<
今はもう廃れているのかもしれないが、当時は「就職活動中、現住所の欄には、首都圏に実家があるならそちらを書いたほうが有利」という、謎めいた不文律があった。実家住まいの人間のほうが採用しやすいということなのだろうか。私だったら、学生時代から仕送りに頼らず、必要なだけ自活できている人間のほうが好印象だけどなぁ、と不思議に思っていた。その後、内定が出てから妹との二人暮らしを解消し、一時的に実家へ戻ったが、かつての子供部屋にもう私の暮らすスペースはなく、初任給から夏のボーナスまでを引越費用に宛ててふたたび家を出ることになる。住宅手当は月六千円。
これがどこから出てきた数字かも謎のままだが、労働組合の先輩闘士諸氏の血と汗と涙の結晶であろう。
岡田育
1980年東京生まれ。