女の節目~人生の選択 (14) vol.14「初めての、就職」【23歳】
と入社後もさんざんネタにされた、渋い声の総務部人事担当は、偶然にも幼馴染の実の父上だった。もちろん、そんなことで1,000人中2人しか採らない会社に入れるわけもなく、ひたすら「ご縁」としか言いようのない出来事である。
○偶然が重なり続けて道が出来てゆく
もし私が面接日についてもうちょっと強い口調でゴネていたら、そして採用担当がもうちょっと狭量で短気な人だったら、クレーマー扱いで落とされていただろう、とは思う。面接官に「なんでスカーフ巻いてるのか訊いて」と告げたのは別の社員で、「手持ちのシャツを全部洗濯に出しちゃってて、襟のないインナーだけだとスーツが貧相に見えたので……」という回答が、当日の凍るような沈黙よりもウケたらしい。通りすがりの女神に微笑まれた二次面接では、「もし上司と編集方針が合わなかったら?」と問われ、「徹底的に戦います!」と答えた。彼が社内で最も好戦的な編集部長で、普段着もミリタリーベストであるということは、入社後に知った。
そんないくつもの偶然が、もしも他のところで違うふうに重なっていたら、私は今頃、テレビ局や、他の出版社で働いていたかもしれない。まぁ、女子アナはないにせよ。