女の節目~人生の選択 (14) vol.14「初めての、就職」【23歳】
それでつい、愚痴を漏らしてしまったわけだ。どうして私の都合を考えてくれないんですか? と。
○何人採るのか? 男女何人か? 何人採るの?
やつあたりでプリプリしながら臨んだ面接は、これまたひどい出来だった。筆記試験の作文はなぜこの題材かとか、どうして履歴書の写真でスカーフを巻いているのかとか、最近読んだ本はとか、他愛ない質問ばかりなのに、答えに窮して何十秒も硬直してしまった。地下鉄京橋駅へ下りる階段の手前で研究室に電話をかけ、「せっかく先生に融通してもらったけど、今日のは落ちたわー。夕方までに戻ります」と告げたとき、ふと、それまでにない不思議な清々しさを感じた。しこうして私は、その不出来な面接を通過した。二次面接はおとなしく指定された通りの日時に赴くと、廊下で順番を待つ間、たまたま通りかかった女性社員が、なぜか私にだけ微笑んだ、気がした。
首の皮一枚で一次選考をくぐり抜けたはずの私の、二次面接の評価は、満点だったのだそうだ。
三次が最終面接で、同じ日に健康診断も受けた。十数名が一度に呼び出され、京橋の本社ビルから銀座にあるクリニックまでカルガモのように行進して往復し、近所の定食屋でライバル全員が膳を並べて昼食をごちそうになり、午後、順番に役員面接をしたら終わり。