『パラサイト』の魅力とは? 町山智浩氏が改めて徹底解説「これは全方向映画」
もしも今回のキム一家のお父さんを、ほかの人が演じていたら、『なんて奴だ』と観る人の心が離れていくと思うのですが、ソン・ガンホが演じると、観客は共感をもって観てしまう。すごく貴重な才能を持った俳優です」
本作では、特に彼の“表情”に注目だ。
「後半、キムお父さんはほとんどしゃべらなくなるんですけど、パク家の奥さんの買い物に同行するあたりから、どんどん表情が暗くなっていきます。そしてある事件が起きますが、あれは突然起きたのではないことが、ソン・ガンホの表情からよく分かります。セリフではなく、顔の演技で見せていく。その辺はやっぱり彼の凄さです」
○■『パラサイト』は、ジャンルものを超えた映画
そして町山氏は『パラサイト』は「全方向映画」だと評した。
「後半、物語は全く違う色合いを帯びていきます。詳しいことは言えませんが、『パラサイト』はキム家とパク家の二層構造だけには終わりません。
前半はドタバタで大いに笑わされますが、一転してどんどん背筋が寒くなってくる。後半はホラーですからね。ビックリしますよ。社会派的なメッセージや現実を描く側面のある映画ながら、前半はケイパーもの、ミッションものとしてのサスペンスをコメディとして撮り、後半はホラーになる。