くらし情報『失恋の残りもの (15) 桜』

失恋の残りもの (15) 桜

いつでも私はこんなふうに、タイミングが悪いのだ。会いたいと思うときに、躊躇して会わなかった。だから、彼も去っていった。そう思うと、こんなことで諦めるものか、という気持ちがこみあげてきた。北上すればまだ咲いているかもしれない。桜の情報が見られそうなサイトを探し、確認してみると北海道ではまだ咲いている。

熱に浮かされたように、穂のかはそのまま週末の飛行機の空席を調べて往復の航空券を手配した。見に行くのだ。
今。いつだって同じように見られるものではないのだから。つまんだ桜の花びらの脈が、まだ、弱々しく打っているような熱を感じた。

<著者プロフィール<
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。著書に「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』、対談集『だって、女子だもん!!』(ともにポット出版)がある。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『SPRiNG』『宝島』などで連載中。マイナビニュースでの連載を書籍化した『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)を昨年上梓。
最新刊は『女の子よ銃を取れ』(平凡社)。

イラスト: 安福望
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