テレビ・ワンシーン考現学 (5) 街歩き番組の「偶然立ち寄った」設定に翻弄される商店街
と前置きして入店した和菓子屋の時計は9時を指している。レギュラー出演者であるアナウンサーが夕方から帯番組を持っているのでそこまでに全行程を終わらせるタイムスケジュールが組まれているのだろう。大きな宣伝効果が見込める和菓子屋は当然、文句一つ言わず、下ごしらえも開店時間も早めるのだ。
○「これってもはや隣町だろう」クラスの移動
知っている場所の街歩き番組で生じる、テレビの中と外のやり取りの定番は、「さぁ、続いては○へやってきました」と発する人たちに対して、「えっ、もうここまで来たの!」と突っ込むこと。つまり、土地勘があればあるほど、「これってもはや隣町だろう」クラスの移動に気付いてしまう。ある駅の南側から隣の駅の北側までロケバスで移動してきたわけだが、あくまでもぶらぶら歩いて辿り着いたという設定が崩れない。「隣町の商店街と一緒くたにされるのだけは不快。ここでもう50年も商売やっているけど、こんなに不愉快なことはない」と商店街の会長が憤ろうとも、これがテレビのお約束だと受け止めなければいけない。
○12時を過ぎたわけでもないのに「自宅内シンデレラ」
特定されてしまうので具体的内容は避けるが、ある社会問題について、知人の母親が自宅取材を受けた。