テレビ・ワンシーン考現学 (5) 街歩き番組の「偶然立ち寄った」設定に翻弄される商店街
と尋ねる蕎麦屋。1日500個も売れるというコロッケを作る厨房に連れて行くための「もし良かったら見ていきます?」「いいんですか!」のぎこちない会話。
○酒焼けした声でナポリタンを出してくるママは動じない
出演者と商店街が一致団結して「偶然立ち寄った」をキープする。自分の役割を熟知しすぎた金物屋の主人が「あれ、どこかで見たことあんなー。テレビ出てるお笑いの人と違うか?」と渋い演技。スナックと純喫茶を足して5で割ったような朽ちた食堂で、酒焼けした声でナポリタンを出してくるママの動じない振る舞い。元も子もないことを言えば、ぶらぶら街を歩くなんて、テレビでは不可能なのである。なぜって街歩きのぶらぶら性を真っ先に壊すのは、時折、お店のガラス窓などにうつり込んでしまう大勢のスタッフ達なのだから。
カメラマン、カメラアシスタント、音声、AD、マネージャー、プロデューサーの大所帯が、ぶらぶら感を壊していく。
○街歩きの偶然性は商店街側が築き上げてきた
偶然性をどこまで維持するべきなのかは難しい。偶然性の質を見定めながら街歩き番組を見ている人は少ないだろう。でも、商店街の皆々は要請に応えるように偶然性を維持しようとする。