女の節目~人生の選択 (17) vol.17「初めての、一人旅」【31歳】
むしろ「帰ったら、私は私の仕事を頑張ろう」なんて、殊勝なことを幾度も考えたりする旅だった。たとえば傍らに旅の友、気心知れた話し相手がいたら、とてもそうは思わなかっただろう。旅先の景色が二倍美しく見えるぶん、惜しむ気持ちもそれ以上に増えて、暴飲暴食と解放感で日頃のストレスを晴らしただけ、帰国後は余計に落ち込んでいたに違いない。
子供の頃から「一人になる」のが好きで、人生に占めるその割合を、なるべく増やせるようにと思って生きてきた。ただそれだけのことだったと気づくのに、30年以上かかってしまった。「私はいったい何のために働いているんだろう?」という問いかけへの答えはまだ保留中ではあるが、お金を稼ぎ、時間を作り、縛りや戒めを一つ一つ解いてゆきながら、自分の答えを見つめ直すことはとても大切だ。あの旅を境に、「一人になるため」が、私の暫定の回答となった。
<今回の住まい<
31歳で転職を決めた、とあるのは2011年のこと。
3月11日の東日本大震災の揺れは、東銀座で受けた。その日の予定をすべて切り上げて会社へ戻り、テレビで津波の映像を見て言葉を失い、銀座の店に行列してスニーカーを買って、支給されたヘルメット片手に数時間かけて徒歩帰宅した。