女の節目~人生の選択 (17) vol.17「初めての、一人旅」【31歳】
時給換算で単純比較すればウェイトレスや家庭教師のアルバイトをしていた学生時代とそう変わらない稼ぎ方で、その極めて非効率な職種を好きで選んだのは私自身であり、そして、そんな状況にあっても学費くらいなら払い終えることができた。
「お金のため」ならいくらでも阿漕になればよかったものを、私にはもうそのフタもない。といって現状、自由気ままな一人旅にさえ出られない。しかも私を縛っているのは、目の前にある仕事の忙しさなんかじゃないことは明白だ。独り身で健康で、好きな仕事をして週末は寝て過ごす時間もあって、こんなにどうにでもなりそうな人生なのに、実際にはまったくどうにもならない、ように思える。なんでだ!?
○帰りたくなる旅
転職の誘いを受けたのは31歳のときで、リスクは増すが、年収は今と同程度という条件だった。実際に会社を移ったのは32歳になってからで、その前後にあちこち旅をした。退社から入社までの二週間は、ニューヨークへ行った。
一冊目の本(『ハジの多い人生』)に書いたので、同じ話を繰り返すつもりはやっぱりないのだけれど、「私はこのために生きて、死ぬんだな」という実感が得られた、初めての海外一人旅だった。