池上彰が振り返るメディアの歴史 - これから必要な覚悟とは?
これによって、アメリカ国内でベトナム戦争に対する反対運動が広がっていった。結果、この世論に押されて、アメリカはベトナムから撤退することになった。このように、メディアの持つパワーに政治がついていかなったケースもある」(池上氏)
アラブの春のきっかけは、FacebookやTwitterだったという。
「2010年12月にチュニジアで、家族を養うために路上で野菜を売っていた青年が、『許可がない』と警官に没収され、殴られる事件があった。その後、青年は市役所に行って『野菜を返してほしい』と訴えたが相手にされず、青年は絶望して焼身自殺をして抗議する。この時、青年は友人に、自殺する瞬間を撮影してもらい、その映像がFacebookに流れたことがアラブの春のきっかけとなった」(池上氏)
その後、内戦状態となったシリアで、スマートフォンが使われるようになり、今日のヨーロッパへの難民問題につながっている。
「アラブ世界だけの話だと思っていたものが、いまやヨーロッパが難民危機のような状態となってしまった。こんなことは誰も予想していなかった。
グーテンベルクも活版印刷によって、宗教改革が起こるとは思っていなかったし、テレビによって大統領選挙が変わり、ベトナム戦争が終わるとは考えていなかった。