しかも「各部門の人材ニーズにいかに応えるか」を主眼としており、配属される本人にとっては寝耳に水のケースも少なくありません。
私も会社員時代、異動には何度も悩まされました。私の時代は大量採用の真っ盛り、同期入社が1,000人以上もいたので、配属は機械的にならざるを得ません。最初の配属は米国人が半分ぐらいの部署でした。英会話のできない私にとって会議など心細くて針のむしろです。その後、他部門に移って心機一転がんばろうと思った矢先に、今度は畑違いの新設部署へ……。活躍している同期を横目で見ながら焦りを感じたものでした。ですので、相談者の方の気持ちも痛いほどわかります。
気分が滅入ってやる気にならず、頭の中で嫌な思いが何度も繰り返されてしまう。そんな時には、私はいちど冷静になって「いったい自分は何に苦しんでいるんだろう」と自分の心のなかを観察してみるようにしています。例えばこのケースでは、こんな思いがうずまくのではないでしょうか
・なんで私がこの部署に配属されるんだろう
・がんばっていたのに私は評価されていなかったのか
・同期の充実した仕事ぶりがうらやましい
・未来に対する漠然とした不安もよぎる
このように、本来の意図と葛藤しあう雑念が頭の中を渦巻いてしまうことを「心理的エントロピー」