2012年9月28日 14:10
奥様はコマガール (64) 結婚生活で気づいた人間の不条理
しかし、それでも役者は脚本だけで、その人物に対する想像を膨らませ、自分なりに役作りしなければならないため、どうしても人間特有の「不条理な多面性」に戸惑ってしまう。
たとえば脚本中のあるシーンでは上品かつ丁寧な台詞を使い、その他の所作も美しく描かれているキャラクターが、また別のシーンでは粗暴かつ下品な言動で描かれていたりすると、役者はつじつまが合っていないと悩むわけだ。
本来、人間とはそれくらい不条理なものなのだが。
話を結婚生活に戻すと、僕はチーと二人で暮らすようになったことで、そういう人間の不条理さに関心を抱くようになった。
血のつながりもなければ、育った環境も違う、赤の他人と暮らすということは、未知の人間をゼロから観察する非常に貴重な行為だ。そして、そこで辿り着いた結論は、人間とはそもそも論理的に破綻した生き物であるということだ。
「こうこうこうだから、こうである」といった方程式などなく、どこか気分屋で行き当たりばったりで、どこまでも掴みどころがない。
チーは確かに細かい女性、つまりコマガールなのだが、よく観察してみれば、それとは違った側面も数多く見つかる。
今後、何十年と連れ添っていけば、きっともっと複雑な多面体になることだろう。