岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (21) 日銀の「金融緩和」は海外に資金が流れるだけ? ”海外バブル→崩壊”再生産も
極端な話、いくらでも東京支店を通じて海外の支店へと貸出しができてしまうのです。
その日から数千億円単位の資金は東京支店から海外の支店、本店へと流れていきました。
こんな巨額の円資金をいったい何に使うのだろうと不思議に思い、ロンドンの担当者に問い合わせをしたところ、円資金はロンドン支店から海外のヘッジファンドに貸し出されるということでした。
ちょうど住宅バブルが盛り上がっていく時期です。
実際に各銀行の現場に行って直接みた訳ではないので、断定することはできませんが、多かれ少なかれ、東京に支店を置いている海外の金融機関はこうした取引を実施していたと考えられます。
つまり、本来日銀の金融緩和によって潤うはずの日本国内が潤わず、逆に海外の住宅バブルの温床を作り出してしまったということです。
私が現状で金融緩和だけを高らかに叫ぶ声に対して危惧しているのは、緩和をすれば今のままでは日本に回らないだけでなく、海外に流れてしまうのではないか、という点です。
欧米も金利を引き下げ、ヘッジファンドが活躍できる状況もかつてとは変わってきてはいるものの、今のままでの日銀が緩和をしても”海外バブル→崩壊”という同じ経緯を辿るだけになるのではないか。