江戸時代でも、侘び茶を完成させた千利休は大きなアイコンだったのでしょう。利休が「変わった玉子料理を作った!」なんていう記録はありませんので、すべて後世の創作です。ただ、利休の名前をかぶせたくなる「侘びな味」がその料理にあるのでしょうか。
●「利休玉子」は白ゴマ
例えば、「利休玉子」はこんなレシピです。白ゴマを煎ってよくすります。酒を入れてさらに念入りにすります。これに卵を割り入れてかき混ぜます。混ぜたものを鉢に入れて蒸します。
具の入ってない茶碗蒸しみたいな料理です。
●「利休かまぼこ」は黒ゴマ
鯛百珍の中から1品。鯛をおろして切り分け、鉢に入れてすります。途中で酒、塩を入れ粘り気が出るまですります。できたら、その身を板にとって蒸し上げます。かまぼこを作るわけです。この上に炒った黒ゴマをふり掛け、焼き目をつけます。どうも「利休=ゴマ」という考えがあるのかもしれません。
ちなみに「かまぼこ」が最初に文献で確認できるのは平安時代、1115年(永久3年)です。ずっと時代が下って戦国時代、織田信長が本能寺で最後に食べた食事にもかまぼこが供されていたそうです。かまぼこは白身の魚を使う、大変にぜいたくな料理だったのです。