男の人からもらった初めてのプレゼント、赤いワンピース。自宅で再度合わせてみると、やっぱりあまり似合っていなかった。なんだか雰囲気がチグハグで、「着られている」という感じ。私は好きな人がせっかく見つくろってくれたワンピースを着こなせるようになりたくて、翌日それを着て美容院に行き、お兄さんに相談して茶髪セミロングヘアを黒髪ボブに変えた。そのまま初めてデパートの化粧品売場に行き、ジル スチュアートのお姉さんと相談して一本の口紅を買った。
今の自分に似合う服はラクでいいけれど、一方で「未来の自分に似合う服」というのも存在する。自分の挑戦を肯定し、世界をさらに輝かせる服だ。あの赤いワンピースは私の“オメカシ”の扉をギギギと開けたのだった。
オメカシをすれば、いくら寒かろうとどこにでも行けるような気がしたし、実際にその冬は彼と手をつないでいろんなところに行った。買い物にも映画にもディナーにも旅行にもそれを着て行った。「冬を生きる服を買いましょう」という言葉の意味が時間差でわかる。物理的に体をあたためて健康を保ち「生きのびる」服だけでなく、心をアツくしてキラキラ「生きる」服が私には必要だったんだと。