その答えを手に入れてはじめて買ったのが、先述したMORRIS & SONSのセーターだ。
シンプルで、手触りがよくて、着ているとリラックスできる。つくりも軟弱ではないから、気兼ねなく洗えるだろう。その服を着ているわたしは、なんとなく満ち足りているように見えた。
試着室で着たそのセーターに、わたしは「もう、これで十分だ」と思った。買い物をしていてそんなことを思ったのは、そのときが初めてだったかもしれない。
それからわたしの買い物の仕方は変わった。
まず、本当に気に入ったものしか買わなくなった。
「こういうのは持ってないから」とか「必要かもしれないから」などと、自分の気持ち以外の都合で服を手に入れなくなった。するとわかってくるのが、世の中には「本当に気に入ったもの」なんてそうそうないのだということだ。それからは、本当に気に入ったら同じものを2着買うようになった。同じお金で2番目に気に入ったものを買うよりも、一番気に入ったものを2枚買うほうが、自分にとって効率も満足度も高いことに気がついたのだった。
こうしてわたしは、彼女の言う「同じものばっかり着てしまう」人になった。
先日、久しぶりに彼女と仕事で一緒になったとき、やっぱり白シャツに紺色のパンツを穿いていた。