「親子愛はすばらしい」にうなずけないあなたへ。“きらいな母”の介護をめぐる1冊
選択を知ることや、親に対する扶養義務の法律上の範囲について把握しておくことは、「親の老い」という遠くない未来を生きるためのたしかな力になるはずです。
本書の中で、カウンセラーの信田さよ子さんは、
“──世間は常に親の味方です。老いた母を“捨てる”のか? とヒューマニズムに訴えてきます。多勢に無勢です。押し返す力が娘に持てるでしょうか。”
という著者からの質問に、
“世間が娘に突きつけるヒューマニズムはいったいだれにとってのヒューマニズムでしょう。「人を殺してはいけない」以外に、万人に共通のヒューマニズムはない、と私は考えています。
世間のヒューマニズムは親、しかも年老いた親の味方です。
すると、だれかが必ずその犠牲になる。それははたしてヒューマニズムなんでしょうか。私は家族についてそういうシビアな全体観を持っています。自分の人生や子どもたちを守るために、手放さざるを得ないものもあるのではないでしょうか。
(――同書、151頁より)”
と答えています。さらに、“そんな関係”のまま親に死なれたらあなたが後悔する、と言ってくる人に対しては、
“そんな関係になったのも、もとはと言えばそれだけのことを母が娘にしてきたからです。