わたしの一部は本でできてる。『モモ』に教わる命のこと【TheBookNook #1】
■時間と命を考える『モモ(Momo)』ミヒャエル・エンデ著
『モモ(Momo)』(ミヒャエル・エンデ:著、大島 かおり:翻訳 / 岩波書店)
初回となる今回ご紹介するのは、小学生の私を旅に連れて行ってくれた思い出の本です。きっと多くの人が目にしたことのある小学校の図書室にも置かれているあの厚い特徴的な絵が表紙の一冊、ミヒャエル・エンデの『モモ(Momo)』。
この物語のテーマは「時間」。少女が“時間泥棒”によって奪われた時間を取り戻しに行く物語です。最後には無事に“ソレ”を取り戻すことができるのですが、そのために少女がしたことは、ただ、相手の話を聞く事だけでした。
本作は現代人が見失いがちな“時間の大切さ”を訴えているだけではなく、時間とは何か、命とは何か、死とはなにか、という誰もが心に一度は抱く問題をファンタジーという手法を使って子供にも分かる言葉で考えさせてくれる作品です。灰色の男達が言葉巧みに奪っていく“時間”。でも当の本人たちは、失われているのは単なる“時間”ではなく、“自分らしく生きる命”だという事に気づいていない。
作中にある「人間とは時間を感じ取るために心というものがある」という一節からも、作者エンデさんは本作を通じて“時間とは命そのものである”ということを伝えたいのだと私は感じています。