タイトルと物語の温度差が凄い。掻き乱され小説。【TheBookNook #7】
背筋をなぞる不安感が病みつきになります。
私は表題作と最後のお話が特に好きでした。タプタプの余韻に浸りながらも、“特に感想はない……”と言ってしまいたくなる。これがこの作品の感想です。
2.村上龍『限りなく透明に近いブルー』
著者の処女作にして芥川賞受賞作品。タイトルの美しさと表紙の青に惹かれ手に取ってしまったこの作品。
ドラッグ、セックス、暴力、依存。文体から滲み出てくる匂いや感覚が妙に生々しく、中学生の私は途中で読み進めるのを断念してしまいました。
そして大人になって再読。相変わらず作中で蠢(うごめ)く薬や性の描写はとても強烈で、その容赦ない不快感に耐えられず、日常のフィルターを通しながらでなければ向き合えませんでした。でも、本当に一瞬だけ、この物語に刹那的な希望を見ました。いや、見間違いかもしれません。この本を手に取るときはどうか自己責任でお願いします。
3.高瀬準子『おいしいごはんが食べられますように』
こちらも芥川賞受賞作品。仕事と食事、三角関係、それぞれの正義。他人に弱さを見せることを許される者とそうでない者。
これは虚無とも絶望とも諦めとも違う。でもその全てが含まれていて、読了後には致命的な感情の静けさが襲います。