子どもが変わる、子育てが変わる“海外からのお客様”を受け入れ:水田家の場合
インターネットやSNSなどのコミュニケーションツールの発達で、外国がより近いものになってきましたが、子どもには実際に肌で感じてグローバルな感覚を身に着けてもらいたい。
しかし、頻繁に外国に行くことはなかなか難しいものです。日本にいながらにして子どもが異国の文化に触れられる機会を与えてあげることはできないでしょうか。外国人留学生を受け入れるホストファミリーはよく知られていますが、今回は少し違った受け入れ方をご紹介しましょう。
有機農家が働き手として外国人を受け入れるシステム「WWOOF(ウーフ)」を通じ、海外のボランティアワーカー「WWOOFer(ウーファー)」を受け入れているファミリーに体験談を聞きました。
■海外ボランティアワーカー「WWOOF」って何?
「World Wide Opportunities on Organic Farms(世界に広がる有機農場での機会)」の頭文字を取った
WWOOF=ウーフ。有機農家などが働きたい人を受け入れ、作業を手伝ってもらう代わりに、
食事と宿泊を提供するシステムです。
京都府綾部市で農業と農家民泊を営む水田裕之さんは、2009年からウーフのホストをスタートし、奥様と8歳になるお嬢さんと一緒にウーファーを迎えています。
ホストを始めた理由は、「小さくとも世界に開かれた農場でありたい」という思いでした。
「私が農業を始めたいと思った頃はウーフのことを知らず、あまり研修などをせずに経験不足、技術不足のまま就農したので、ウーフのように気軽に体験や研修ができる仕組みは素晴らしいと思います」と、
手伝いながら農業を知る機会をウーファーに提供しています。
「ウーファーの手伝う内容は、季節によって異なりますが、わが家は田植えや稲刈りなどが中心。特に人手が必要な時に来てもらっています。田んぼや畑の仕事以外では、イベントなどの出店準備なども手伝ってもらっています」
オーガニックマーケットで、収穫した農産物から作ったパンやおにぎり、味噌などを販売
■受け入れ人数延べ100人! 日本にいながら世界を感じるウーフ・ホスト
今まで水田さんが受け入れたウーファーは、年間5~10人、延べ人数は100人ほど。出身国は、台湾、香港、シンガポール、タイ、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、フランスなどアジアや欧米が多く、日本人のウーファーもいるそうです。
「アジアの方は旅行がてら日本を体験、楽しみたいという方。欧米の方は環境や食事、農業に関心のある方が多い気がします。
日本の方はこれからの生き方を探している人が多いようです」と、ウーファーにより目的や思いはさまざま。
野菜の植え付け前の畝作り作業をするウーファー
初めて会う人と、いきなり生活を共にする。ハードルが高いことのように思えますが、水田さんに不安はなかったそう。むしろ「家族の一員のように食事を共にして、話したり作業したりすることはいつも新鮮な喜びです」と返ってきました。
「うちでは、日常の暮らしと仕事がはっきりと分かれていない部分があるので、公私はあまり意識はしていないです。もちろん、日が暮れてその日の作業が終われば部屋で話したり、食事をしたりします。海外の方であれば、お互いの国のことをいろいろたずねあったり。
日本の方だと、人生の話をすることも多いですね」
台湾からやってきた農家民泊ゲストとの食事風景。食卓の上には自分たちで収穫した農作物を使った料理がずらりと並ぶ
1週間から10日程度、寝食を共にするウーファー。帰国後もSNSで連絡を取り合ったり、年賀状を出したりして交流を続けています。なかには、水田さんのところが気に入って再びやってくる人もいるそう。
「いつか、来てくれたウーファーの国々を周りたいです」と水田さんの夢は広がります。