連載記事:わたしの糸をたぐりよせて

疲れ果てたママ友との関係、夫が私を雑に扱う理由は?【わたしの糸をたぐりよせて 第9話】



と、次の瞬間。

「ぐぉぉぉぉぉおおおおぉ、ごぉおおおおおおおぉおおぉぉお」

(え? まさかの……い、び、き?)

亮くんは、私の上に乗るなり急激な睡魔に襲われたのかそのまま寝てしまったようだ。

何とか抜け出した私は、亮くんに毛布を掛けてあげながらもあっかんべーしてベッドに潜り込む。だけど、なかなか寝付けず、仕方なくスマホを取り出すと、イナガキくんからLINEが来ていたのに気がついた。

「元気? あれからしばらく連絡取れなくてごめん。じつは、あと1ヶ月ほどでここを離れることになったんだ。仕事の目処もついたし、よかったら近いうちに会わない?」

私は、急に苦い思いがこみ上げ、衝動的に通話ボタンを押していた――。

■夫が私を雑に扱うワケは…

翌朝。


「いててててて……なんで俺ソファで寝てるんだろ」
夫は昨日の行為を覚えていない
あきらかに二日酔いの亮くんは、頭を抱えながら私に水を持って来て欲しいようなジェスチャーをした。

いつもなら、水を汲んであげるところだけど、私も泣きはらした目でそんなことする心の余裕がなかった。

「友里、どうしたその目? ものもらいか?」

亮くんは昨日やらかしたことを覚えていなかった。それだけでも腹が立つ。

それもなんとか我慢して、亮くんがシャワーを浴びている間に私はソファ周りを整えた。
すると……。

置きっぱなしの亮くんのスマホを覗いた途端、例のアキって子からの「助けてください(´;ω;`)」というメッセージが目に飛び込んできた。

(亮くんは、私を助けないで会社の子を助けるんだ……私にはあんなぞんざいな態度を取って……)

シャワーから出てきた亮くんに、私は目すら合わせたくなくなっていた。


とにかく、いまは早く亮くんに出勤してほしかったし、口も利きたくない。

「なんだよ、その無愛想なの……まあいいや。行ってくる」

ドアがバタンと閉じる音に、また涙があふれそうになるけれど、それをこらえて悠斗をいつものように送り届ける。

途中、カオルさんに話しかけられた気がするけれど、「急いでるので」の一言だけでそそくさと帰ってきた。



(もっと早くこうすればよかったのかもしれない)

そう思うと、うじうじと悩んでいたことが何だかとてもちっぽけなものになっていく気がした。
私はずっと、自分を置き去りにしてしまった。
昨日の亮くんの態度は、私が私を大事にしなくなった結果だ。

もっと、私は自分を大事にしたい。


そう思ったとき、ふとミシンセットが目に入った。

(あ……しばらく私、デザイン描いてない)

私はしまい込んでいたケント紙を出すと、無我夢中でクロッキーを描き始めた。

何枚も、何枚も、紙にいまの気持ちをぶつけていた。
我に返り、視線を落とす。

躍動感にあふれるその絵には、自分の本心が映し出されている気がした。
目の前が急に明るく開けたように感じ、進むべき道が照らし出されたような感覚をおぼえた。
イラスト・ぺぷり

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