連載記事:わたしの糸をたぐりよせて
夫との不穏、そしてすれちがってしまったワケ…ママに縛られない私が歩む先【わたしの糸をたぐりよせて 第12話】
■私は失ったものに囚われていたけれど…
そして、いよいよネットショップがオープン。これまで依頼してくれていた人からも同じように注文が入ったことで、私は飛び上がりたいぐらいうれしい気持ちになった。
その後もオシャレ家族としてインスタでも大人気の人までもインスタで写真をアップしてくれるという幸運が舞い込む。私は、デザイナーとしての第一歩を踏み出したのだ。
そんなある日――。
実家から小包が届いた。
封をあけると付箋が貼ってあり、「イナガキさんから転送を頼まれたのでそのまま送ります。母より」とある。
包み紙をそっと開いてなかを見ると、セルリアンブルーにレモンイエローのドッドという鮮やかで元気になれそうな柄の生地と、イナガキくんからの手紙が入っていた。
「ネットショップ、開店おめでとう。何で知ったかって? キミのLINEのタイムラインにネットショップのことがあがっていたからだよ。夢の第一歩を踏み出して、本当に嬉しい。
あの日、キミのスケッチ画を持って帰ったでしょ。あのときから、いつかキミが夢を叶えたときに、僕にできることがしたいと思ってた。今回はその第一弾として、僕のお気に入りのテキスタイルを送ります。これで、ハツラツとした子ども服を作ってよ。
これは、僕からのオーダーでもあります。じゃ、お母さんによろしく」
……イナガキくんらしいな。そう思いながら私はさっそくこの生地に合いそうなデザインを描き始めた。このテキスタイルを活かした、かわいい服を着た子どもと街中ですれ違うことを思い浮かべながら。
そして、できあがった服の写真をアップしたところ、驚くほど反響があった。
(みんなが求めているものが、私の手のなかにあったなんて……)
私はずっと独りぼっちで、みんなから置いていかれたと思っていた。
でもそうじゃなかった。もしかしたら亮くんは、私が「助けて」と言えば手を差し伸べてくれたのかもしれない。
亮くんも、本当はきっと私に悩んだり、苦しい気持ちを抱えていたのかもしれない。それでも私を信じてくれていた――。
私からプロポーズするぐらい憧れて、大好きな亮くん、そして大切で愛おしい悠斗がいる。マキちゃん、上田さん、そしてイナガキくん…私には一度手放したものがあっても、もう一度新たにつかめる糸があったんだ。
そう私がたぐり寄せたものは、私が新たに紡いできたものだ…。
あの少女のときに思い描いていた夢のカタチとはたしかに変わっている。
それでも私の糸の先にはきっと、あのとき見たセルリアンブルーの空よりもっと澄み渡る未来が広がっていると信じていきたい。
―完―
イラスト・
ぺぷり
顔よりも大事!?男性から愛される女性の行動