「本当に好きな人からは好かれない」のはなぜ? 『傲慢と善良』から見える現代恋愛のこじれ
自身の理想と現実のギャップを埋めるためにそれぞれ努力をしているのですが、客観的に読み進めてみると、少しずつ努力の方向性が間違っているようにも見えます。
だけど、誰一人として「悪者」がいなかったように感じたのも、一つのポイントです。生きていると、私たちは知らないうちに色々と間違いを犯します。だけど、それでも人生は続いていくし、やり直すことができるのだと、最後は前向きな読後感で、物語は終わります。
資本主義の国で生きる限り、競争社会からは逃れられないかもしれません。だけど、坂庭真実の行く末を見届けるうちに、本当の自分を受け入れることが大切なのだとも思わされます。本当の自分は弱く、そして結局、一人では生きていけないのだと受け入れることで、坂庭真実は自身の人生観・結婚観をリセットすることができます。
本を読むことであなたは、自己愛にまみれた弱い自分とも、向き合うことになるでしょう。
だけど自分の「善良さと傲慢さ」に気づくことができれば、積みゲーと化した今の人生を、リセットできるかもしれません。結婚できないのも恋愛が上手くいかないのも、あなたに特別な欠陥があるわけではありません。ただちょっと、自己愛が強すぎるだけなのです。
(ミクニシオリ)
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