くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第3話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第3話)

「感動しちゃった。ありがとう」

病院からの帰り、大和が運転手役を買って出てくれたので、ひとまず実家に戻ることにした。

空き巣被害にあった家は、さすがに気持ち悪くて帰る気になれない。

「引っ越しするんだよね? いつ頃の予定?」

「即入居可の良い物件が見つかれば、すぐにでも」

「じゃぁ、不動産会社に寄ろうか」

実家方面へと向かいかけていた車を別の車線へと移して、進路を変える。

「いいよ、そんな。せっかくの休みなのにゆっくりして」

「こういうの何て言うんだっけ……? 寄りかかった……じゃなくて、乗車じゃなくて、」

「乗りかかった船」

「そう、それ」

すごいね、よく分かったねって、屈託なく笑う。

今回の入院生活で、この笑顔にどれだけ助けられただろう。

「大人になったよね。
大和がこんなに頼れる男になっていたとは知らなかった」

「惚れそうでしょ?」

「調子に乗るんじゃないよ」

生意気なやつには、デコピンだ。

「痛ぇ。手厳しいなぁ、しおちゃんは」



敵意

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第3話)


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退院から1週間後、仕事に復帰した。

といってもプロジェクトから外されているので、まずは再びチームに加えて欲しいと頼むところからだ。

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