「感動しちゃった。ありがとう」
病院からの帰り、大和が運転手役を買って出てくれたので、ひとまず実家に戻ることにした。
空き巣被害にあった家は、さすがに気持ち悪くて帰る気になれない。
「引っ越しするんだよね? いつ頃の予定?」
「即入居可の良い物件が見つかれば、すぐにでも」
「じゃぁ、不動産会社に寄ろうか」
実家方面へと向かいかけていた車を別の車線へと移して、進路を変える。
「いいよ、そんな。せっかくの休みなのにゆっくりして」
「こういうの何て言うんだっけ……? 寄りかかった……じゃなくて、乗車じゃなくて、」
「乗りかかった船」
「そう、それ」
すごいね、よく分かったねって、屈託なく笑う。
今回の入院生活で、この笑顔にどれだけ助けられただろう。
「大人になったよね。
大和がこんなに頼れる男になっていたとは知らなかった」
「惚れそうでしょ?」
「調子に乗るんじゃないよ」
生意気なやつには、デコピンだ。
「痛ぇ。手厳しいなぁ、しおちゃんは」
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敵意
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退院から1週間後、仕事に復帰した。
といってもプロジェクトから外されているので、まずは再びチームに加えて欲しいと頼むところからだ。