「先輩、知ってました?」
「いや……うん、まぁ」
知っていたけど、改めて聞かされると胸の奥が痛くなる。
新実さんの隣に立ち、恥ずかしそうにしながらも微笑む雪村さんを見ていられなくて視線を床に落とした。
あの場所にいるのは、私だったのに……。
「ごめん、ちょっと」
いたたまれなくなった私は、電話がかかってきたフリをしてその場から離れた。
祝福ムードに包まれる中、笑顔を続ける自信がない。
あの2人はいつから付き合っていたのだろう?雪村さんがうちの部に配属されてから?それともその前から?
二股をかけられていたこともショックだけど、全然気が付かなかった自分の鈍感さにも嫌気がさす。
「……ダメだ、ダメ! 切り替えないと」
いつまでもうじうじしていられないし、今はとにかく仕事で挽回しないと!
自分に喝を入れるため、近くにあった自動販売機から少し高めの栄養ドリンクを購入しようと考えた。
しかし、まだ手が上手く使えずモタモタしてしまう。
財布の小銭入れと格闘していると、背後から声をかけられた。
「手伝いましょうか?」
雪村さんだった。
「あっ、ううん、大丈夫」
「高杉さんって、いつもそうですよね」