「そうって?」
「自分は1人で何でもできる。他人に頼りたくないって。顔に書いてあります」
強い、あからさまな敵意。
控えめでいつも恥ずかしそうに笑っている雪村さんとは別人みたい。
「リハビリの一環だから、できることは自分でしないと」
「そういうところが可愛くないって言ってましたよ」
「え?」
「あいつは強いから1人でも生きていけるって。新実さんと付き合っていたんですよね?」
「彼から聞いたの?」
社内で私と新実さんのことを知っている人はいない。
別に知られて困ることではないけど、あえて言わなかった。2人だけの秘密。
その踏み込んで欲しくない場所に、ずかずかと入られて不愉快な気持ちでいっぱいになる。
おそらく、その感情が顔に出ていたのだろう。
雪村さんの顔つきが一気に変わった。
「私、高杉さんのこと大っ嫌いなんです。顔を見るのも嫌なくらい」
「そう。別に興味ないから理由は聞かないし、嫌われていても特に困らないからいいよ」
「本当に困らないですか?」
「……どういう意味?」
嫌な予感がする。
雪村さんは「これ言っちゃってもいいのかなぁ」と勿体つけてから、私の耳元に口を寄せた。