「例のプロジェクトから高杉さんを外すようにお願いしたのは、私です」
「はっ?」
「あれ~忘れちゃったんですか? 私の伯父さんが常務だってこと」
「……」
「私をあんまり怒らせない方がいいですよ。じゃないと、彼氏だけじゃなく職も失うことになりますよ」
勝ち誇ったような表情で鼻を鳴らす。
悪魔のような顔をした雪村さんに呆然としてしまい、何も言い返せなかった。
◆
本当の私
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「信じられない!」
「しおちゃん、落ち着いて!」
退社後、むしゃくしゃした気持ちがおさまらない私は大和に連絡を入れた。
ちょうど彼も仕事が上がりだったようで、近くの居酒屋で落ち合って愚痴を聞いてもらうことにした。
「何が『職も失うことになりますよ』よ。小娘が」
「小娘って、歳いくつなの?」
「26? 27だったかな……知らない!」
「俺と同じくらいじゃん」
ビールと、お通しの枝豆が運ばれてきた。乾杯をするのも待ちきれずジョッキに手を伸ばしたところで、大和に止められた。
「しおちゃんは、こっちのノンアルね」
「えー! やだ」