「気づいたら朝に」水谷豊監督が語る映画『轢き逃げ』誕生秘話
自分のなかで登場人物がずっと生きているような状態でした」
結婚式への打ち合わせに急ぐ秀一が運転する車が、人気のない路地裏で若い女性をはねてしまうところから物語は始まる。輝のささやきで、2人はその場から逃げ去ってしまうのだが――。
「セリフについては、俳優が感情を込めやすいものにしたいというふうに思っていました。このセリフだと、気持ちが乗って表現できるなぁとか、そんなことは俳優の立場から見ていた気がしますねぇ」
子役時代から数えて50年を超えるキャリアは、脚本作りのうえでも役に立った。
いまでは今年3月までの放送で、シーズン17を数えるメガヒット・ドラマシリーズ『相棒』(テレビ朝日系)の杉下右京のイメージが強いが、若いころはアウトローな役柄が多く、伝説の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(’72年)では、初回で犯人役を演じて、注目を集めている。
犯人側の心理も、刑事側の心理も、考え抜いて、演じてきた水谷さんならではのサスペンス。『轢き逃げ』は、水谷さんの俳優人生の1つの集大成であり、66年の人生が凝縮された作品でもある。
映画『轢き逃げ』で、水谷さんは、監督・脚本だけでなく、轢き逃げされて亡くなった被害女性の父親・時山光央役を演じている。