2019年5月9日 11:00
料理研究家・鈴木登紀子 令和時代に疲れたら「おだしをとろう」
削り節でだしをとるだけなら、10分もかからないですが、おいしいおだしは心を静めて、五感を研ぎ澄ませないと作れません。香りがフワッと立って、黄金に輝くようなおだしが仕上がるだけで心が満たされるものよ」
『きょうの料理』(NHK Eテレ)の講師を41年にわたって出演するほか、卒寿を過ぎたいまでも「鈴木登紀子料理教室」を主宰している。
「料理教室に集まってくれる生徒さんは、私がお鍋を持つと、メモをとる人が多いの。なかにはスマホで撮影しようとする人も。記録を残さないと不安なのかもしれませんね。でも、料理で大事なことは分量や手順ではありませんよ。食べる人が元気なら濃い味つけにする、疲れていたら優しい味つけにする……料理をすることは、相手をおもんぱかる想像力を働かせることでもあるのです」
『やさしい心で、やさしいお味に』彼女が料理教室でつねに生徒たちに教えていることは、あらゆることに通じる。
「私は母親から『思えば、思ってくれる』と教えられて育ちました。
これは、仕事にも言えることなのではないかしら。心をこめて成し遂げれば、必ず見返りがあるはず。料理だって、いやいや作っていたら、とんがった味になってしまいます。