くらし情報『端役人生70年!俳優・加藤茂雄さんと巨匠・黒澤明監督との絆』

端役人生70年!俳優・加藤茂雄さんと巨匠・黒澤明監督との絆

「いちばん多いときで150人、最後のころも70人はいた東宝の大部屋俳優は、みんな会社の方針に従って辞めちゃった。でも、僕は役者って仕事がますます好きになって、たった一言、セリフ言うだけでも楽しくて。時代の流れだからって、好きな仕事を手放すなんて、できなかったよ。僕ひとりだけプロダクションに移って、俳優を続けていく道を選んだんだ」

専属契約が解かれ、加藤さんはテレビドラマにも出演した。46歳の挑戦だった。

「結婚が39歳と遅く、まだ子どもが小さかったから、仕事を選んでる余裕もなかった。だから、子ども向け番組だろうが、なんだろうが、最初の1年はちょい役ばかり100本ぐらいテレビに出たよ。でも、当時はテレビのギャラは安くて。
100本出ても、年収は100万円に届かなかった」

食べていくため、加藤さんは撮影がない日は漁に出た。船に乗り、地引網も引いた。さらに、タイル張りや警備員などのアルバイトも。

ときおり大部屋時代の仲間に会うと、皆が同じことを聞いてきた。

「加藤、役者で食えるか?」

俳優を辞めた彼らは、加藤さんの何倍もの安定した収入があった。それでも皆、芝居への未練があったのだろうと思う。

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