端役人生70年、加藤茂雄さん「僕の俳優人生は黒澤明監督のおかげ」
その1人が後年、加藤さんがテレビの現場で顔を合わせた、ショーケンこと萩原健一だった。
「ショーケンとはドラマ『祭ばやしが聞こえる』なんかで、何度か一緒になってね。あるとき『加藤さん、黒澤さんってどういう人?』って。彼も黒澤映画に出てみたかったんだね。『この先もずっと役者でいくなら、一回は黒澤さんの洗礼を受けたほうがいいよ』って教えたんだけどね」
その後、萩原はオーディションを経て、『影武者』(’80年)への出演を果たす。
「だけど、ショーケンはずっとテレビでやってきて、セリフを口元でモソモソと言うスタイルだった。それがリアルだと思っていたんだろうし、そういう癖を持っちゃってた。だけど、それは黒澤さんの求める演技とは違う。
だから『影武者』では、こっぴどく叱られたらしい。だけど、それで彼の芝居はよくなったよね。先日、彼の遺作になっちゃった大河ドラマ『いだてん』を見たけど。なかなかいい芝居してたよ」
最近は年に数回、舞台に出演するぐらい。ほとんどの時間は、漁師として過ごしてきた加藤さん。そこへ昨年6月、主演映画の話が舞い込んだ。
「俳優の仕事は、そろそろおしまいと思っていたから、主演映画なんて夢にも思ったこと、なかったよ」