上半期過去最多の55件 倒産した事業主が語る介護経営の実態
介護事業は下半期に倒産件数が多くなる傾向もあり、それらを鑑みると、’19年の年間倒産件数は過去最高の120件になっても不思議ではありません」
そう東京商工リサーチ情報本部情報部の後藤賢治さんは言う。倒産件数は年々増加傾向で、その主な原因については、(1)介護報酬の改定による報酬額の減少、(2)介護業界に参入する新規事業者が増加し、競争が激化、(3)深刻なヘルパー不足、などを挙げている。
介護報酬とは、事業者が利用者に各種介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に支払われる報酬のこと。原則、介護報酬の7〜9割は介護保険から支払われ、1〜3割は、利用者の自己負担となっている。3年に1度、国が介護報酬の改定を行う。
冒頭のAさんが回想する。
「倒産のいちばんのきっかけは、’15年の介護報酬の引き下げ。これによって、同じサービスを提供しても利益は1〜2割減りました。
スタッフの給与を維持するために、配食や病院への付き添いなど介護保険外サービスで収入を増やそうとしましたが、スタッフの理解が得られず、人材不足などの問題にも直面して、経営はどんどん悪化。小さな事業者はもともと体力がないので、介護報酬の引き下げをきっかけに経営が苦しくなるパターンに陥りやすいのです」