『エール』古関裕而さん 最愛妻に捧げた“五千曲のラブレター”
正裕さんが語る。
「母亡きあとの父は、とにかく、がっくりきていました。夫婦としても、音楽を通じても、認め合っていた2人ですから。母の金子は、ずっと古関裕而のファン第1号だったんです」
結婚以来続いた、夫婦の固い絆。こんな秘話も明かされた。
「手紙ですが、実は父から母に宛てたものは、ほとんど残っていません。母が夫婦げんかの末に焼いたから、と聞きました。父が若い女性歌手の名付け親になったそうなんです。
それを知った母が激怒して、手紙を燃やし、父は家を追い出されたとか(笑)。それほどのジェラシーというのも、実は母の父への愛情の裏返しなんですよね」
2人が送り合った、こんな熱烈な手紙がある。
《私もただ、あなたを愛するのみです。キス、キス。私はこのレター一面にキスします》(金子)
《金子さん!貴女は、私の発想の源です》(裕而)
裕而が、音楽と共に歩んだ80年の生涯を閉じたのは、元号が平成に変わった’89年8月18日。正裕さんには、忘れられない父との最後のやり取りがある。
「父が生前、よく口にしたのが、『目をつぶれば、自然に音楽が湧いてくる』という言葉。入院中に尋ねたことがあったんです。