池袋事故遺族・松永さん語る心の変化「憎しみより家族への愛」
とはいえ、正直、まだ無理くりですが……。
事故防止に向けて、精力的な活動を続けていた松永さんだが、今回のインタビューのなかで印象的だったのは、終始抑制された加害者の飯塚幸三被告(88)への感情だった。
率直に「憎しみはありませんか」と尋ねた――。
いえ、絶対、ありますよ。人間ですから、それは否定しません。でも、憎しみを抱いている間は、相手だけにとらわれてしまい、それでは自分がしんどいです。それだったら、生前の2人の顔を思い浮かべて、愛と感謝を思っていたほうが心も安定します。苦肉の策ですが、それが僕なりのやり方。
そうして憎しみと処罰感情を分けて考えるように、1年をかけてマインドチェンジしていくことができたという感じです。たぶん、真菜も莉子も、生前に僕の怒っているところは見たことがないはず。だから、2人にそんな姿を見せたくないという思いも、正直ありました。
実は、事故の朝、こんなことがあったんです。前日の帰宅が遅くて、寝坊していました。そしたら、キッチンで莉子にご飯を食べさせていた真菜がすごい勢いで僕のもとに駆け寄って、おなかの辺りにギュッとしがみついてきたんですよ。
「どうしたの!」