くらし情報『小山明子 故・大島渚監督の闘病を支え続けた“ユーモア介護”』

小山明子 故・大島渚監督の闘病を支え続けた“ユーモア介護”

しかし、それはかえって彼の自尊心を傷つけているのではないかと思ったんです」

便秘薬を使っても、なかなか排泄できないときは……。

「ママなんか、バナナみたいなうんちが出るのに、どうして出ないんでしょう」

ときには下剤を使った結果、粗相してしまうこともあったが。

「まあまあ、今日は世界地図になっちゃいましたけど、これでまた食べられるわね。安心、安心」

小山さんは、ただ笑い話で場をごまかしていたわけではない、と強調する。

「食べてきちんと排泄することは回復の基本である、と私も主人も知っていたからです。いろんな本で病気の勉強もしました」

夏のある日には、風呂上がりに小山さんが麦茶を飲んでいると、「ママ!ママ!」と、自分も飲みたいという夫の催促の声。そんなときは、口移しで飲ませてあげた。

「ひと口500円よ、パパはふた口だったから今日は1,000円」

隣にいた息子さんが、思わず、「それじゃ、ぼったくりバーだよ」というと。


「ママのキスなんだから、けっして高くはないでしょ」
小山さんはいう。

「人間、いつどうなるかわからないと、大島の十数年に及ぶ介護生活が教えてくれました。だから、一日の最後は優しい愛の時間で締めくくりたいと思うんです」

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