2020年12月17日 06:00
64歳ホームレス女性殺害事件「明日はわが身」の悲痛
そして電源の入らない携帯電話――。これが今の日本社会の実態です。中間層の底が抜けて、いつ誰がホームレスになってもおかしくない状態なんです」
犯人の境遇も想像する必要がある、と奥田さん。
「殺害したのは46歳の男性でした。犯した罪は決して許せませんが、彼は長年引きこもりで『自室の窓から見える風景だけが自分の世界のすべてだ』と話していたとか。彼も、案外、私たちの身近にいる存在なのではないか。そういう意味では現代の縮図のような事件だと思います」
奥田さんは、この30年間で“格差”がどんどん広がった、と指摘する。
「いまや労働人口の4割、2千万人が非正規雇用です。
国税庁が令和元年に発表した統計によると、平成30年の正規雇用の平均年収は男性で約560万円、女性は約390万円なのに対して、非正規雇用では男性で約240万円、女性は約150万円にまで落ち込みます。これほど正規と非正規で格差が広がり、かつ男女で賃金の差がある。母子家庭になると貧困率は5割を超えます。大規模災害などが起きて基盤が崩れたとき、まっさきにシワ寄せがくるのが特に単身の女性です。こうした現状が、女性の自死増加の背景にあるのではないでしょうか」