2020年12月17日 06:00
64歳ホームレス女性殺害事件「明日はわが身」の悲痛
現在、この資金を全国の支援団体に振り分けて、約130室を確保した。
「北九州の私のところでは、女性も入居しています。先日は、いわゆる接客を伴う飲食店で働いていた20代の女性が入りました。コロナ禍で店が閉店し、寮を追い出されてしまったそうです」
奥田さんは、こうした住宅セーフティーネットの仕組みを、政府も巻き込んで構築するため、国交省や厚生労働省などに働きかけを行っている。
「人は本当に追い詰められたら、なかなか『助けて』と言えないものです。ふだんから言っておかないと。だから私はいつも、日頃から『助けて』のインフレを起こしておきましょうと言っています。日頃から『助けて』と頼りあえる関係をつくっておくことが大切です。
64歳のホームレスの女性も、弟さんがいたが頼れなかった。頼れば“家族の責任”にされてしまう社会だから。でも、電話番号を書いたメモは大事に持っておられたそうです。彼女がどんな気持ちだったか。それを“想像”することこそが“知性”だと思うんです」
残念なのは、周囲の人たちがバス亭に座っている彼女を心配して声をかけていたが、救えなかったことだ。
「彼女のケースは大変残念でしたが、やはり『だいじょうぶですか?』と声をかけることからしか関係は始まりません。