枝元なほみの「夜のパン屋さん」コロナ禍のパン廃棄や困窮支援に
冒頭のクリスマス当夜の営業時もコロナの影響がますます強くなっているのが感じられた。
「風邪、ひかないでくださいね、コロナも収まらないしね」
当時、お客さんの側からも、そんな声かけが多く聞かれた。枝元さんは、
「女性にも働いてもらえたらなあと思うんです。コロナ禍のなか、飲食業等にパートなどで携わることの多い女性の負担が大きくなっていると聞きます。パンを買うのさえ経済的に大変かもしれません。だったら、話をするだけでもいい。話しかけにくいかもしれませんが、だいじょうぶ。私、もう60歳を回ったからには、怖いものなしのおばちゃんパワーで、もう勝手に、こちらからガンガン声かけしますから」
冗談っぽく口にしたあと、再び真顔に戻って言う。
「感傷だけじゃありません。そうした出会いを、なんとか仕事などにつなげられないかとの野望も、私、ありますから。今は思うんです。35年間、料理の仕事をやってきて、誰も飢えさせないのが私の仕事かと」
気温7度。寒風吹きすさぶなか、すでに閉店しシャッターも下りた書店の軒先で、ぼんやりともった夜のパン屋さんの明かりが、そこだけ、とても温かく感じられた。
(撮影:田山達之)
「女性自身」2021年2月23日号 掲載
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