盟友・寂聴さんに寄せ…作家・澤地久枝「死ぬ準備ができてない」
叔父のことは、まとめなければいけないと思って準備しています」
澤地さんは「要介護4」となった当初の心境を「もうダメだなと思っていたら、ダメだったでしょう」と振り返っていた。そしていま、心掛けているのは「今日を一所懸命に生きよう」ということ。いくつになっても肝心なのは、もうダメだとあきらめず、いまを一所懸命に生きる姿勢だ。それはすなわち「生きる気力」である。ただその気力については、「他人が渡せるものではないし、本人がその気にならなきゃダメなものなんです」とも澤地さんは言うのだ。
いつ“そのとき”が来てもいいという達観と、まだ死ぬ準備ができていないという執念。それらは人の心に共存していていいものなのだと、澤地さんが示してくれている気がする。そのときどきで心身に折り合いをつけながら、なんとか生きていくこと。
それも「生きる気力」にほかならないではないか。
澤地さんの「要介護4」からの復活は、澤地さんと同じ世代の人たちを勇気づけてくれるに違いない。長いインタビューを終えた澤地さんは、階段を一歩、一歩と踏みしめながら下りると、言った。
「こうして手すりをつけました。この15段を上って仕事場に上がれば、下で電話が鳴っても聞こえませんから、執筆に集中できる。